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◆平岩12:10 → 蓮華温泉13:21 (糸魚川バス 長岡200か12)

いよいよこの旅のメイン、蓮華温泉線へと乗車する。
駅前に降りると路線バスがお出迎え。この路線は車掌さんから予め乗車券を購入してから乗る、昔ながらのツーマン運行が現在もなお行われている路線なので、バスの横には大きなガマ口を持った車掌さんが立っていた。

蓮華温泉ゆきのバスと車掌さん

と、ここで最大のピンチ到来! さっき糸魚川駅で切符を買う際に小銭を使いきってしまっていた。
財布を開くとそこには千円札は無く、万札が…。恐る恐る万札は無理かと聞くと、待ってるから近くの郵便局で崩してきてくれとの旨。時計を見ると発車まであと5分!急いで郵便局へ駆け込みすべて千円札に両替し、また急いでバスへと戻り謝りながら蓮華温泉までの乗車券(運賃1180+荷物賃310円)を購入した。

バスに乗り込むと車内は空っぽ。どうも私の他に乗客はいないらしい。
最後部の座席にはオレンジ色の大きなタオルケットがかけてあり、荷物置場となっていた。

バス車内

間も無くして運転士と車掌が登場、蓮華温泉へ向けてバスは発車した。
バスは駅前を出るとすぐに細い路地を左に曲がり、148号バイパスの大きな橋の下をくぐり、どんどん山の中へと入っていく。このサイズ(KC-LT333J)のバスが走るとなると、早くもこの時点で十分な狭隘区間だ。

バスは国道148号バイパスをくぐり大所集落へ

大所の集落付近は比較的開けているので道路もセンターライン付きの立派な道路になっているが、その先の木地屋の集落付近でその光景は一変した。バス一台スレスレの幅の道路に路肩は田んぼ。しかも急カーブの先には急勾配。バスは対向車が来ないことを確認しながら一段ギアを落とし一気に通り抜けた。

木地屋集落

木地屋を抜けるともうこの先は蓮華温泉まで家はない。ここからはひたすらアップダウンの激しい山道を数十キロに渡って走り抜ける。木地屋を抜けて数分、バスはいきなり未舗装の道路へと突っ込んだ。
路肩の看板を見ると舗装工事をしているらしく、この先しばらく断続的にこういったダートコースがあるらしい。
人家もない、山の中の砂利道をガタゴトと一台の路線バスが行く──。ここだけ見るとまるで40年ほどタイムスリップしたかのように思える…

断続的に砂利道が続く

平岩駅を出て20分、運転席の無線機が鳴った。

運転士が無線機に出ると、車内に蓮華温泉から平岩駅へと向かうバスがこの先の退避場に到着したことを向こうの運転士が告げていた。なるほど、この幅の道では大型バス同士の離合は到底不可能なので、こうしてあらかじめ無線機を通じて離合の連絡を取り合っているらしい。
無線が入ってから間もなく、退避場でハザードを焚いて待機する平岩駅行きの38号車と擦れ違った。

対向するバスと無事離合し、ホッとしたのも束の間、今度は乗用車2台が向こうからやってきた。離合スペースも無い場所だったので、仕方なく向こうの乗用車が離合スペースまでひたすらバックすることに。
バスもノロノロと乗用車を追いかけ、無事離合することが出来た。

無事下りのバスと離合、しかしその先には対向車×2

その後、右手に白池・五月池を望みつつ、バスは快調に山を登る。と、白池バス停の次のわさび沢バス停でバスが停車した。しばらく時間調整のため停車するとのこと。
運転士さんより、「そこの沢の水が美味しいから飲みに行くといい」と言われ、運転士さんと二人でバスを降りる。少し歩いた所を流れている沢へと下り、手で沢の水をすくって飲んでみた。やはり沢の水、舌が痺れるほど冷たかった。運転士さんは近くで植物写真を撮っている人と喋っていたので、こちらも適当に写真撮影。ウド沢の橋からいま登って来た眺めると、下界はガスでもう見えず、ただただ山ばかりの風景がそこには広がっていた。

わさび沢で休憩

5分間の時間調整の後、バスは再び発車。グネグネと右に左に曲がる八丁坂をギアを落としながらゆっくりと登っていく。かなり山を登ってきたのだろう、バスの車窓から見える緑も高山植物が増えてきた。
この時点ですでに標高は1200メートルに…

八丁坂 → 佐渡見平

いよいよ前方が開けてきたので終点はもうすぐなのだろう。時折飛び出してくる県外ナンバーの対向車を華麗にかわしつつ、ラストスパート。

七本かつら → ヤホー平

180度ターンで弥兵衛川を渡りその先のカーブを越えたら、大量の乗用車と小屋が見えてきた。平岩駅から坂を登り続けて22キロ、ようやく終点の蓮華温泉へと到着したのだった…
下車の際にさっき購入した乗車券を車掌さんへ渡し、バスを降りる。

降りたところで待合室の中からボードを持った人が出てきて、こちらのアンケートに答えてくれと言われた。
紙には「何で来たか」「自家用車乗入規制には賛成か」などの項目が書いてあった。ふと待合室の横に立てかけてある看板に目をやると、そこには「観光シーズンは道路混雑が著しく、路線バスの運行に支障を来たしており、シャトルバスによる運行実験を検討しております。(by糸魚川市商工観光課)」の文字が。
周囲を見回すと70台停められる蓮華温泉の駐車場は確かに自家用車で溢れかえっていた。
とりあえず、率直な意見を書いて係りの人に渡す。しかし、受け取った人も笑っていたが、"観光等が目的"で"路線バス"でこんな所まで来た物好きなんて後にも先にも私ぐらいじゃないだろうか。



折り返しまで約一時間、さてどうしようかと思案していたら、先ほどの運転士さんより少し先の蓮華温泉ロッジで温泉に入ってくるといいと勧められた。露天風呂は結構歩かなければならないが、ロッジならものの数分で着くうえ、立ち寄り入浴もOKらしい。その勧めに従い、少し先のロッジへと足を延ばした──

蓮華温泉

入浴料として800円を支払い、内湯(総湯)に浸かる。単純硫黄泉で硫黄のツンとした香りが鼻をつく。湯も白く濁っており、湯の花が沈殿していた。この湯はリウマチなどに効くらしい。

40分ほど入浴した後、再びバスの所まで戻り、少し周辺を歩いてみることに。
展望台から下界を眺めてみると、バスを降りたときよりも霧は濃くなり、しかもこちらへ迫ってきていた。

バスへ戻ると大きな登山用リュックを背負った人3人がバス停で待っていた。往路は一人で貸切だったが、復路は少なくとも私以外にも乗客がいるようだ。




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